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写真家 岡田敦 - Office Okada | Official Blog

I kiss the world by taking the photograph

■ BOOK REVIEW / I am

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#岡田敦 #iam #木村伊兵衛写真賞
(C)Atsushi Okada

Official H.P:www.akaaka.com/(赤々舎)
text by subaru matsukura


問い。キズ。生きる。生きない。

レビューを執筆する際、私は本を手に取り、1度、2度、じっくりとページをめくる。
だいたいは1週間ほど読み繰り返して、一気に1時間ほどで書き上げる。
ただこの1冊に込められた意味は、私の筆を硬直させた。

「生きること」その意味を問いかける彼女や彼らの眼差しは、
ぞっとするぐらいに澄んでいて私の心に突き刺さる。
「死」を覗き込むことで感じる「生きる」ということ。
自分自身の存在を証明するように自らの体に自分という存在を切り刻む。
見つめる瞳、瞳、瞳。刻まれる傷、傷、傷。

彼女たちは目をそらさない、フィンダーからも現実からも。
生きることからの逃亡のように傷つけるのではなく、
自分がここで「生きている」という叫びのようだ。

この1冊を私の持ちうる言葉を介して伝えることの難しさ。
言葉の無力さ、そして、人という存在、生きるということの強さ、そして複雑さを痛感する。

存在、生命、終焉、誕生。
拡大解釈して私たちは同じようなサイクルを様々な決まり事にのっとり日々を重ねていく。
あまりに同じような日常に、我を、日常を、自分自身を見失うことがある。
今、胸元で脈打つ心臓の鼓動を疑うことがある。

同じ車両の携帯電話をたたきつづけるサラリーマンや女子高生も
夜の町で働く水商売の人間も退屈な授業に頬杖をついて眺める学生も
いつしか必ず、個々が重ねる人生の一幕で眼前に提示されるはず
生きることとは何か。死ぬこととは何か。そして自分という存在は何なのか。

それは若かりし青春の愚問。持て余す時間から生まれる終わりのない問答。
そうやって心の奥底の隙間に隠した事実。
本作の被写体として登場する若者たちの目が、傷が、存在が、今、このように筆をとる私に比べ、果てしなく「生きている」ことを感じているようだ。
おそらく、あのとき私が心に隠した疑問は、本来の意味での「生きる」ことの放棄だった。そう思わざるを得ない。
iam2



彼らの傷を見つめ、視線を受け止め、私の魂が背中からわしづかみに引きはがされ
揺さぶられ、問われる。本当にそれが生きるということですか?
純粋無垢な質問を投げかけられた私は、無論、「生きるふり」を決め込んでいたから、焦点もあわず、彼らの視線から目をそらす。
そらした私の目線がとらえるものは、「生きる」ことと正反対に存在する「死ぬこと」そのものだった。
そう私たちは「生きる」こととの対峙をいつごろからか諦めていた。
実はそれが人間が人生を全うする上で最重要課題だとも気付かずに、目をそらし続けてきた人生が、ここにある。

彼らの視線は、「死」へ向かう行為のリストカットという問題ではなく
「生」への飽くなき疑問、問答のようで真理が潜んでいる。
その傷の先に彼らのあくなき存在証明への滑走がある。葛藤がある。
彼らは生きている。おそらく遥か昔、いや数十年前までが彼らのような力強く生きている人間の眼差しを私たちは持っていたのだろう。

いつ頃からか私たちは、それを避け、ひた隠し、ごまかし、見てみないふりをして、この心臓の鼓動に鈍化していく。まるで人形のようにその存在は空っぽで決して目には見えない社会やルールの空気に踊らされ動かされ、そして麻痺していく。そして壊れていく。

最初に本書を開いた時、私はその傷から目をそらしてしまった。
ただ彼女たちの眼差しと目が合うたびに何度も何度も自問自答した。
それは私の存在の源流へと逆らう精神の旅路でいて、ひどく深く自分が生きていることを体感させられる体験。

遅すぎるかもしれない「生きること」への旅路。「生きること」への思考。
その一歩を歩ませたのは、まぎれもなく彼女たちの強い視線だ。
まるで道しるべのような眼差し。
強く清く生きることへの道が、あなたにも見えるだろうか。
もし見えたのならば、それは間違いなくあなたの道だろう。



書名:岡田敦写真集 I am
著者:岡田敦
アートディレクション|町口景(マッチアンドカンパニー)
言語:Japanese

発売:July 2008
価格:2,940 円 (本体2,800 円 +税)
243×210mm|88頁|並製
ISBNコード 978-4-903545-14-1 (4-903545-14-8)
  1. 2008/06/22(日) 12:28:59|
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