写真家 岡田敦 - Office Okada | Official Blog

I kiss the world by taking the photograph

■ 『北海道新聞』2017年3月29日掲載

消えゆく馬 最後まで撮る「ユルリ島に生きた証を」

 根室市昆布盛沖のユルリ島の馬の撮影を続ける写真家岡田敦さん(37)=東京=は11日に根室市内で行った講演で、人や馬のユルリ島との関わりを美しい島の写真とともに紹介した。岡田さんは丹念な取材をもとに「消えゆく馬の記録を写真家として残す」と撮影にかける思いを語った。

 ユルリ島周辺はコンブ漁場で、岡田さんなどによると1950年に島に移り住んだ漁業者が50〜51年ごろ、コンブを島内の干場に運ぶため初めて馬を持ち込んだ。その後、昆布盛側に新しい干場ができ島から人が去り始め、71年に最後の番屋がなくなると島に残された馬たちが半野生化した。

 馬主たちの高齢化で馬の管理が難しくなり2006年、オスが間引され、メスのみ14頭が島に残された。毎年島に渡っている岡田さんの調べによると、馬は年々減り14年から昨年5月まで5頭で推移したが、今月の上陸調査で4頭に減っていることが確認された。

 岡田さんは09年に東京の編集者からユルリ島のことを聞き、いずれ島から馬が消えると知り、「島の記録を残す」と決意。島は海鳥繁殖地で63年に道の天然記念物に指定され、上陸許可を巡る市との交渉は進まず諦めかけたが11年、東日本大震災の被災地で「自然は永遠ではない。馬が生きた証を残さねば」と痛感、再び市と交渉した。11年8月に島の調査を市から委託するという形でやっと上陸許可を得た。

 初めて島に渡った時は「花畑に迷い込んだような美しい世界で、こんな島が日本にあるんだなと驚いた」という。

 岡田さんは1960年代の島の写真や、77〜79年に現地調査した根室高校地理研究部が作成した島の地図、馬を島に初めて持ち込んだ漁業者の妻へのインタビュー動画など、貴重な取材成果も初公開。「多くの家畜が人間に役割を与えられる中、島の馬は自由で幸せ。島の素晴らしさを伝えたい。根室の子がまちの魅力を誇りに思ってもらえるような写真を残したい」と語り、今後の撮影への決意を新たにしていた。

 講演会場では自然保護などの専門家ら7人によるパネル討論もあった。周辺海域の漁業活用のため66年にユルリ島を国から購入した落石漁協の浄土昭雄専務は、漁協として岡田さんに上陸許可を出した理由を「岡田さんの力を借りて島の記録を残そうと考えた」と振り返り、「馬たちを最後まで見届け記録してほしい」とエールを送った。

 岡田さんは北海道稚内出身で08年に木村伊兵衛写真賞を受賞した。講演は道中小企業家同友会くしろ支部根室地区会の主催で、会場の市総合文化会館には約100人が集まった。(相内亮)
 
 
  1. 2017/04/12(水) 00:00:00|
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