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写真家 岡田敦 - Office Okada | Official Blog

I kiss the world by taking the photograph

■ 『毎日新聞』/「美しい」は不謹慎か

『毎日新聞』朝刊コラム発信箱 2013年09月24日
- 「美しい」は不謹慎か - 小国綾子

 写真界の芥川賞、「木村伊兵衛写真賞」を2008年に受けた写真家、岡田敦さん(34)と久しぶりに会って、東日本大震災で写真家に何が起こったかを尋ねた。使命感から現地に行った人、行っても迷って撮れなかった人、撮っても公表しなかった人、被災地に行かないことを選んだ人。それぞれに深く悩んだという。
 岡田さんは震災1カ月後、自分の目で確かめようと東北へ。撮るつもりはなかったし、実際ほとんど撮れなかった。被災した当事者が携帯電話で撮った写真の力強さのほうに心を打たれた。いかにも被災地、なんて写真は撮りたくなかった。しかし最終日、目の前に広がる気仙沼の海に心が動かされた。「美しい、と強く感じてしまって」
 電柱や家の屋根が漂う静かな海にレンズを向けた。「被災地なのに美しいと思うなんて不謹慎だ」と自分を責めながら。後日、繰り返し自問した。なぜあの時「美しい」と感じたのか。なぜ「被災地なのに」と後ろめたくなったのか。
 当時、世の中は自粛一色だった。広告や雑誌では海はもちろん地域の祭りの写真さえ「たき火が火災を連想させる」と忌避された。そんな中、岡田さんは一つの答えにたどりつく。「美しい海だから、そこに人が集まり街ができた。『被災地だから』と、そこに美を見いだせなくなったら、人は歩き出せないのではないか。生きようとする人も景色も、僕にはやはり美しい」。しかし、メディアのインタビューでそんな思いを伝えても、決まってその部分だけ、無難な言葉にすり替えられた。
 岡田さんの写真集「世界」を見て、かみしめたこと。「被災地」という名の土地はないし「被災者」という名の人はいないのだ。


#岡田敦 #世界 #赤々舎


毎日新聞:毎日jp / 引用先URL

Amazon:写真集『世界』
 
 
  1. 2013/11/10(日) 00:00:00|
  2. 新聞掲載