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写真家 岡田敦 - Office Okada | Official Blog

I kiss the world by taking the photograph

■ 「岡田敦『世界』レポート。美の視点についての一考察」 木下 恵修

「岡田敦『世界』レポート。美の視点についての一考察」 木下 恵修

■ 第一章

 2012年9月に赤々舎から発売(2013年5月に新装版がリリース) された写真集『世界』は、岡田敦にとって木村伊兵衛写真賞を受 賞した『I am(アイアム)』以来5年越しとなる、同社からの写真 集だ。岡田の得意とするポートレートはもちろん、これまで積極 的に発表してこなかった風景を含めた様々なカットが、 364mm×249mm(ほぼB4サイズ)・170頁というボリュームで収 められており、新しくも深みを増した岡田の表現世界に触れるこ とができる。2012年の発売を前後してAKAAKA GALLERY(東京・ 青山)、BEAMS B GALLERY(東京・新宿)でエキシビションを実 施。単なる写真集の抜粋版ではない、見る側にいくつもの問いを 投げかけるインストールが、そこにあった。

 最新作『世界』を考える上でまず触れておきたいのは、岡田の 名前と作風を世に知らしめた傑作『I am』についてだ。 『I am』は、自傷行為に及んでしまった女性の裸体を主な被写 体として配置。白を基調とした淡い空間に人物のカットのみを構 成し、自傷という苦のイメージとは裏腹に、それらを内包する 「美しさ」に言及する作品だった。苦のイメージを持つ腕の傷 と、美的感覚に満ちた裸体および写真集全体の雰囲気。さらに は、腕の傷をも美的に捉える概念、観念。この、岡田によって投 げ入れられた表現は、世の常として賞賛と批判の両価値を生んだ が、世間の感覚を完全に止揚したかのようなクリエイティビ ティーは圧巻だった。被写体への歩み寄りと飽くなき芸術性への ストイックさ、またルポルタージュとしての側面。こうした超分 野的な試みを持つ「新しい芸術作品」としての『I am』は、岡田 自身が「新しいジャーナリズムだった」と述べているように、 堂々たる受賞作だったと言える。 社会派的な一面を醸しつつも、被写体を、純粋に美を伴う存在 として認識させる「岡田様式」は、新作『世界』にも存分に受け 継がれ、一切の精神的ブレもなく研ぎ澄まされている。そうした 意味で『世界』は、単に岡田の新作というだけでなく、写真界に おける先進の作品と位置づけられるのかも知れない。


◇ 木下恵修(キノシタ・ケイシウ) 1973年、福岡県生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科写真領 域修了。修士(芸術学)。大学ティーチングアシスタント、広告 会社、写真誌出版社などを経て、現在フリーランスのライター・ 編集者として活動中。国内最大のフォトグラファーズ&フォトビジ ネスフェア「PHOTONEXT」の企画運営にも携わっている。

#岡田敦 #世界 #赤々舎
 
 
  1. 2013/11/09(土) 00:00:00|
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